バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

床屋とプールと焼きそばと

 ときどき坊主頭にしたい衝動に駆られる。最後に坊主にしたのは20のとき。ちょうど初めてタイに来たころだ。
 唐突にそう思ってやるわけなんだが、だいたい後悔するんだよね。でもやりたい。あの刈ってしまった瞬間。もう後戻りできない瞬間がたまらないんだわ。18のころ、ビートルズばりにマッシュルームしてたときがあって、一気に刈った。床屋でバリカン使ってもらったんだが、いいんですか、って訊かれた。本当にいいんですか、って。で、バリカンで額の真ん中の真上から10センチくらい刈って、いいんですか? って。ダメって言えねぇだろ、それじゃ。なに、そこで、あ、やっぱ・・・・・・、ってなったらどうするつもりだったのだろうか。カッパにするしかないわ。
 次に憶えている刈りがそれから1年くらいかな。当時勤めていた海洋調査の出張先、下田だったかと思うが、夕方、散歩しているときに床屋をみつけて衝動に・・・・・・。みんな、びっくりしてたわ。
 あ、それのあとすぐタイに来たから、坊主にしたのってその2回だけだわ。小さいころはスポーツ刈りという名の坊主だったのはのぞいて。
 そんなにおしゃれに興味がないので、髪型なんてあんまり気にしたことがない。初めて髪を染めたのも20歳過ぎてからだし。岡山の自動車工場で7ヶ月働いていたときは1度も髪を切らず、アフロにしようかと思っていた。唯一そのときくらいじゃないかな、髪型に金をかけたのは。
 そういえば、その前にもちょっとあったな。22くらいのときかね。ブラッド・ピットファイトクラブのときの髪型にした。写真持っていってこうしてくれって。同じ写真でもできる人とできない人がいるのね。草加の本屋の上にあるシャンプーの銘柄の美容院の若い兄ちゃんはできなかった。渋谷の安い店はみんなできた。やっぱ場所柄かね。
 で、アフロは結局できなかった、というか、やらなかった。俺としてはマイケル・ジャクソンばりにドでかい頭にするつもりだった。でも、結構長くないとできないんだよね、アフロって。まあ、今となってはやらなくてよかったと思うけどさ。ただでさえでかい頭にでかアフロが乗っかったら、大変。毎回電車のドアとかに引っかかるだろうし、周りに迷惑だ。だいたい朝とかのお手入れで俺の手が上に届かないって、余計なお世話じゃい。
 今回はダイエットマラソン中にいろいろと考え事をしながら走っているときに、JRの「あ、京都へ行こう」みたいに、あ、坊主にしよう、と思い立ち。
 もうそうなったらやりたくて仕方がない。
 ということで、昨日、近所の床屋を探して放浪。そこでみつけたラーンタットポムチャーイ。男性の髪を切る店。床屋です。
 床屋なんて久しぶりだなぁ。14年ぶりくらいか。18のときに坊主にした以来。足立区の通い慣れた床屋。幼稚園のときからだから14年くらい通ってたのよ。金がなくて安く切れるところということで、駅前にある2000円以下くらいで切れる美容院にたまに行くようになって、実家が引っ越してしまい、あまりそのエリアに行かなくなってしまったこともあり、それ以来床屋はご無沙汰。
 その安い美容院は若い美容師さんなんかでうまい人もちらほらいるんだけど、ひどいんだ。何がひどいって業務用にゴミを捨ててとか床を掃いてとかそういったことを伝える隠語みたいなのがあるんだけど、エスカレートして客の容姿などもどうやら言っているようなんだよね。気分悪いわ。草加とか谷塚あたりにあるアルファベット一文字の店ね。
 久しぶりの床屋にドキドキしながら入店。
 バリカンもすでに準備されている。よしよし。これで全部刈ってください。
 したらおっさん、ほかのダメなの? 的な。できねぇのかよ。最も簡単なのでは? なんかプライドがあるのかな。
 じゃあ何ができるの? このバリカンで。
 俺もできないんならもう仕方がないし、当初の坊主の目的を大きく逸れて、バリカンをとにかく使って的な感じに。
 結果を言うと、今まで350バーツ払ってやってもらってた髪型とほとんど変わらないできばえに。60バーツ。安っ! 訊き返したよ、本当に60バーツなのか。髭剃りと肩もみ込みだぜ。
 そういえば日本の床屋も髭剃りとかあったよね。いろんな機能を備えた椅子でさ。アンテナみたいなのが横に立ってて、そこに前掛けを挟むの。そうすっと髪が落ちて足にかかったりしないし。リクライニングはもちろん、目の前の鏡の下には洗面台が付いてて、前屈みになる必要はあるけど、一度座ったらもうその場で全部完了するのよ。髭剃りもシェービングクリームをさ、缶のプシューってやつじゃなくて、クリームみたいのなのをお湯と習字の筆みたいなので泡立てて塗ってくれるんだよね。髭剃り用のナイフみたいなカミソリで隅々まで剃ってくれて、つるっつるになるんだよ、店を出るとき。懐かしいなぁ。
 タイの床屋は髪を洗うというのはなかった。あと、髭剃りもなんか普通の替え刃だった。額とか頬はシッカロールで剃られた。口の周りやあごは缶のシェービングフォームだった。
 でも、満足だ。
 帰り際、店のおばさんとその友だちに、あんたはどこどこの家の親戚の子だっけ? って訊かれた。違うよ、俺日本人だよ、って答えたら、え゛〜、だって。これはいい店の証拠だ。俺のタイ語をすんなりわからない人は言っては悪いがあんまり頭の回転がよくない。頭の回転がよくない人は長い付き合いができないか、それより先に日本人だからと悪巧みが入ってくる。
 この床屋は通うぞ。



 引っ越してきて約2ヶ月。やっとプールで泳いだ。
 最近ネネが好きなようで、ほとんど毎日入っているということで、一緒になって行ってみた。
 ネネ、入って2分もしないうちに唇の色がデスラーみたいに。
 確かに気温は高いが、建物の影になっているプールの水は冷たい。
 でも、出たがらない。
 見るとほかの子どもたちもデスラー化しながら泳いでいる。
 これは冷たいとなかなか膝より上に水をかけられない俺を見て、一緒になって泳いでいるアムが、こんなん冷たくない、日本人はおかしい、と。
 人種関係ねぇよ、って言おうとアムを見たら唇が真っ黒になってた。体が拒否ってるじゃねぇか。ちなみにアムはブラウンの感じなので、青くならないで黒くなる。実際はネネもアムも紫になっているのだろうが、ネネは肌が白いので青っぽく、アムはどす黒く見える。
 久しぶりに泳いだが、なかなか泳げるもんだね。25mくらいは潜水で一気に行けるし、50m程度であればクロールで息継ぎなしとか。去年の5月にパタヤに行ったとき、ホテルのプールでそれこそ4、5年ぶりに水に入ったんだけど、初日に三半規管に水が入って溺れた女の人を目の前で見たからちょっと引いててちゃんと泳がなかった。目がぐるぐる回っちゃうから大変なんだよ。
 アムが、カバが泳いでるカバがいる、って笑ってて、周りの人も失笑しているのが悲しかった。



 夕方ビッグCに行ったとき、車でネネが寝てしまった。で、到着してアムがネネを俺に渡した瞬間起きてしまったんだが、その次の瞬間には指で1、2、3とカウントしたあと踊り出した。
 寝起きがすごい。
 今日の夕飯は焼きそばにしてみた。
 でも、焼きそば用の麺じゃなく、ラーメン用の麺。それも、普通にラーメンで食べてもおいしくないやつ。家に帰ってきてから思い出した。
 がっと炒めてもなんか微妙。
 でも、ソース入れたらなんとか食えるレベルになった。
 ビバ、ブルドッグ!