3:05 目の前で発砲事件発生
俺ひとりがそっちの方を見ている状態で。そんでバイクとか何台か停まっていて、パンという音が。最初はバイクのバックファイアかな、と。
そんで見てたらわらわらと八方に人が逃げ出し、ひとりの大柄な男が後ろ向きに倒れた。
撃たれた!
急いで車を飛びだし、中央分離帯を乗り越えて駆け寄った。タイ語じゃない。英語でもない。アフリカ系の黒人のようだ。
撃たれた男は意識ははっきりしている様子。右足の付け根の上と性器の中間の当たりを撃たれていて、弾は貫通していない。
乗っていた車はダッシュでUターンに向かうが渋滞で間に合わず、別の車が到着。
被害者とその恋人と思われる女性と友人の3人、俺とこの車の中学生の息子が乗っている。前にも運転手ともうひとりいたけど、この中で英語が一番なのはどう考えても俺。で、俺が先頭切って相手することに。
彼ら3人は動転しているのか、大丈夫なのか、本当に死なないのか、って。大丈夫でしょ。撃たれた奴も「もう俺は死ぬ」なんて言ってるし、本当に死にそうな奴はそう言わんし。なによりマジで大丈夫なのって顔で恋人と友人が見ているのはわかるが、被害者本人まで、マジ大丈夫? 的な目で見ているし。
近くのラマ9病院へ搬送。
彼女はどうしても被害者についていたいというので応急処置室から出ない。友人だけは出てもらって名前や国やホテルやらの情報を聞くんだが、まず名前がわからん。ファーストネームはイングリッシュネームを使ってるみたいだけど、ファミリーネームがアフリカンすぎて書けない。で、書いてもらったけど「Njuguam」みたいな感じで、読めねぇ!
被害者は24歳男性で、ケニア人。プラトゥーナームのホテルに泊まっていて、旅行者のよう。バンコクにいる同郷の友人に会いに来たみたいね。それでソイ6のハリウッドに遊びに来て、ホテルに帰るのにここまで歩いてきて、方向がこっちで合っているのか訊いたら撃たれたという。犯人はバイクで逃走したが、当然番号も顔も憶えていない。まあ、応急処置室から大騒ぎしている元気な声が聞こえているし、この調子でアホの逆鱗に触れてしまったんだろうな。音的にも大きくなかったし、最近流行のペン型銃ではないかと。
途中で刑事とは到底思えないTシャツにサンダルの一見どころか二見も三見も普通のおっさんが3人来て、そろいも揃って英語できないからということで通訳に。俺もそんなに英語できるわけじゃないのに。で、最後に友人と彼女の名前も確認しろということで訊きにいったけど、またわかんねぇ。書いてもらっても読めねぇ。
終わってから担架とか回収した。そのときに外国人なので搬送表にとりあえずサインをもらえと。これは報徳堂用ね。タイ人だと省略なんだけど。で、ちょうど警察に電話番号があれば訊いとけって言われて合わせて訊いてたんだが、俺はもう笑い堪えるのに必至でさ。どういう処置をしたのか知らないけど*1上半身が吐瀉物ですごいことに。それはいい。俺もこういうのにはもう慣れているさ。この被害者は俺と背丈が一緒くらいで結構太っている。ころころした感じ。まあ、引き締まった脂肪なので服を着ているとそうは見えなかったけど。そんな彼が薄い緑のシーツの応急ベッドの上でフルチンの真っ裸。それはいい。ここは応急処置室なんだから。ただひとつ。ひとつだけツボに入ってきて、じわじわと。
真っ裸なのに脛までの中途半端な丈の白い靴下だけは脱いでないんだよね。
そこまで脱いでるならば脱がせればいいのに、と思うと段々ツボにじわじわと。
そんで、笑いを堪えながら情報収集している横で、被害者が彼女になんか怒鳴っている。最初スワヒリ語かなぁ、と。でもちょっと違うし、英語っぽい。よく聞いてみるとサックとか言っているみたいで、スラングかな、と。医者がまだ来てないし、状況も状況で怒っているのかな、と。でもちゃんと言っていることがわかった瞬間、さすがに笑いました。
「ソ〜ックス、ソ〜ックス!」
だって。靴下脱がせって怒ってたみたい。
ド突かれている彼女の顔が「あのとき死ねばよかったのに」的な目になってまた笑った。
外国の病院で心配しているようで、我々と看護婦と病院を信じなさい、と言って帰ってきた。
とりあえず、レスキュー入って一番役に立ったと思ったね。充実です。
*1:たぶんアルコールを抜くようなことしたのかと