バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

その詐欺の話

どこがシンガポール人?

今日は観光警察の話。ついさっきのことで。
何度か引っぱった詐欺事件の通訳の話。まず事件の概要から。
Sさん*1が4月の後半、チットロム*2周辺を歩いていると、タイ人らしきカップル(自称アン(女)とアレックス)に声をかけられた。しばらく話しをして、まあ悪い人でもなさそうだったので電話番号を交換。5月はじめ、Sさんはある病院で手術。何度かアンから電話。5月15日、Sさんはアレックス夫婦と彼らの自宅で食事。それが済むとある男が入ってきた。男の名前はエドゥー。アンの叔父で、カンボジアのカジノでディーラーをしていると言う。彼は「今からシンガポール人が来るからブラックジャックをやろう」とSさんを誘う。エドゥーはシンガポール人を騙し、Sさんを儲けさせてやると。アンの伯父ということで彼を信じたSさんはOKしてしまった。癖のある英語でまくしたてるようにルールを説明するエドゥー。Sさんはブラックジャックのルールを知っていたので軽く聞き流す。そしてシンガポール人を交え、ゲームがはじまった。エドゥーがディーラー。Sさんはあれよあれよという間に1000万円をこえるほどの勝ち。ところがゲーム終了後、所持金の少ないSさんに「ベット(賭け金)の分600万円を実際に納めてもらわないと勝った分は支払えない」と言い出す。そしてSさんは一度日本へ帰国。21日にバンコクの空港へ着くとアンたちが迎えに来ていて、そのまま彼らの家へ。彼らの要望で4ゲームほどプレイ。しかし、最後の最後で全額をベットし負ける・・・・・・。エドゥーはあと200万円をベットすればとりあえず今まで払った分は取り返すように仕組んでやると言う。Sさんはもう60万円しかなく、それをまず渡した。エドゥーは「今夜はもう遅い。明日電話するから、夕方またプレイしよう」と言い、Sさんは帰宅した。そして待てど暮らせど電話は来ず・・・・・・。
それでその日のうちに観光警察へ通報したという訳。被害額は690万円。
これは昔からある、定番中の定番の手口。また犯人はほとんどの場合、フィリピン人*3
で、その日の夕方俺が呼ばれていき、警官がSさんにエドゥーに電話させるから、と勝手に囮捜査の一員に。翌日の午前中に約束をするも、当日になってやっぱり今日は無理だ、と。
観光警察は、被害届けを警察署の方へ提出しなければならないと。家を憶えていないSさん。仕方ないのでアンと会ったチットロムの管轄、ルンピニー署*4に俺とSさんの2人で向かう。が、拒否される。理由は「1.ブラックジャックなど賭博はタイ国では違法行為である。2.証拠がない。負けたから騙されたと言うケースが多々あるから」。
仕方なく俺とSさんと非番の観光警察のおじさんと3人で、Sさんがなんとなくこの辺だというエリアを探す。もちろん見つからない。
翌日、観光警察から、やはり被害届けを、ということで、今度はパトカーでルンピニー署へ。警官の説明で渋々受理。さて帰ろう、というとき別動隊から、容疑者宅を発見の通報。とりあえず見に行くと、ビンゴ!! 場所はパッタナカーン通り*5のソイ46。確かにSさんの憶えていた場所と近い所だった。
所轄のクロンタン署へ被害届けの再提出。今回はすんなり受理してくれた。しかし・・・・・・東南アジアの公務員特有の、過激なまでにのんびりした対応に、書類1、2枚程度書くのに、俺は4回も同じ話して、結局5時間近くかかってしまう。さらに書類作成後、私服刑事たちと共に張り込みまで。私服刑事の聞き込みで、その日の朝、まだ日が昇らないうちに引っ越したらしいことが判明。で、やっと解散。
しばらくなんにもなかったのに、昨日クロンタン署から電話があり、明日(つまり今日ね)の朝来てくれと。朝じゃないと間に合わない、と。
で、行ったらその時間に誰もいないし。やっと来たら、車に乗せられて警察病院へ*6そこでモンタージュの作成。午後でも間に合うのでは? しかもシンガポール人の分だけしか作らないし。
昼に終わって、食事して解散。1時間ほどしてSさんから俺に電話。シンガポール人を捕まえた、と。なんでも、5月はじめの手術の再検査で行った病院の前でばったりでくわしたそうだ。警察に電話し、俺も急行。
到着してみると身長150くらいのおじいちゃんだった*7タイ語も英語もちょっとしかできない。しかも知らないふり。こいつもやっぱりフィリピン人だった。
警官到着でクロンタン署へ連行。モンタージュを改めて見ると、似てる似てる! 作っておくもんだね
尋問も俺が英語で通訳。っていうか「俺、英語できねぇよ」って刑事に言ったら「OK、じゃあお前が通訳な」って。全然話し聞いてないし。
尋問中、その刑事が「てめぇタイ語ペラペラだろ? ああ?」って突然キレた。で「ちょっとお前ら外出てろ」って。しばらくしたら部屋から出てきたけど、フィリピン人のおっさん、しょんぼりしてた。ぜってぇ殴られたよね
おっさんもしぶとくて、全然吐かない。でも間違いないんだよね。エドゥーの携帯番号もおっさんの携帯にあったし。俺はそれまで知らなかったけど、Sさんが捕まえたとき、おっさん誰かに電話してたらしいのね。たぶんエドゥー。白を切りとおせって指示があったと思う。ちなみにエドゥーはトゥギという名前だった。
俺も横からおっさんにちょっかい。
俺:トゥギはどこ?
おっさん:知らない。ほんとに知らないんだ。
俺:携帯に番号入ってるよ。
おっさん;友達だから
俺:今知らないって言ったじゃんか。
おっさん:知らない。
俺:なんだそりゃ? じゃあアンは?
おっさん:知らない。会ったこともない。
俺:ゲームのときにいた女だよ。
おっさん:知らない。俺の知り合いじゃない。
俺:会ってるじゃんか。
おっさん:会ったこともない。
俺:まあいいや。で、おっさん、Sさんから騙した金、どうした?
おっさん:知らないって! 俺はあのとき200ドルしか受け取ってないんだって!!
やってんじゃんか。観光警察も来て尋問したけど、結局吐かずに現在も拘留中。

*1:仮にSさんってことで

*2:伊勢丹バンコク店の近く

*3:つい先週も観光警察にこの手の詐欺で犯人が捕まったがやっぱりフィリピン人。犯人を見に行ったが、なんつうか普通なら信用できないタイプの容貌だった。被害者は日本人22歳。被害額87万円だそう

*4:ルンピニー公園

*5:ペッブリー通りを東へ

*6:伊勢丹そば。警察病院は、まあ警察の敷地にあって、日本で行ったら警視庁の本庁の敷地ってこと

*7:写真