死ぬかと思った
どうも俺の血がゆっくり運転するってことを許してくれないのね。
客先に向かうとき、行きは時間が決まってるから遅れないように飛ばしてしまうわけね。それはいいんだけど、帰りは特に予定もないわけだから安全運転で帰ってくればいいものを、ガンガンに飛ばして帰ってきちゃうのね。
でもぼんやりと飛ばしてるわけじゃなくて、3つのミラーも駆使して全方向に注意を払いながら車と車の間をどんどん潜り抜けていくわけ。
ところが今日は、ちょっとしくじって、マジ、死ぬかと思った。
その幹線道路は普段ボロボロの道で、順繰りに工事が進められてきている。区間ごとにアスファルトを引っ剥がして、また敷いていくみたいな。片道3車線あって、大体1車線ごとに剥がしてるのに、そこは走行車線2車線を引っ剥がして、追い越し車線だけがちゃんとしてた。
でもアスファルトを剥がしたまま、工事車両もないし、ガタガタが気にならない人はそっちを走ったりしている。もちろん俺もそっちを走るわけよ。そっちの方が車が少ないんだもの。
そうして爆走していたら、工事車両がぽつぽつ出てきて。そうすっと追い越し車線しか走れないんで、そりゃあ詰まるわけ。
俺の前はかなり先まで車がいなかったし、160kmくらいで走ってたら工事車両もなくなった辺りで追い越し車線で詰まってゆっくり走ってる最後尾に追いついてしまった。
そんでまたアスファルトの剥がれた走行車線に戻ったら!
そこは橋だった。
タイのどぶ川とか運河とかに架かる小さい橋はてっぺんが台形状になってるのね。丸く滑らかにしてないで、ドンと置きましたよ! 的に設置されてる。
普通に走ってても飛びそうになるのに、160km/時だとWRCばりよ。
しかも路面状態が激悪だから、着地した瞬間、ゴッ、ってやな着地音と同時に、リアがキュルキュル〜キュルキュル〜って右へ左へ。
俺もハンドルを右へ左へ。ヒョエェェェェェェ!! ってなった。日本のゲーセンのセガラリーで鍛えられた腕があってこそ切り抜けられたピンチだった。
死ぬかと思った。
それからバンコク近郊まで来て、空港の前の高速を走ってて。そこは郊外から入ってくる場合、入ってすぐに料金所はなく、空港の前辺りに来てから料金所になる。
料金所が近づいてきたところで、前の前の車が道路の真ん中で急に止まった。真ん中でなんで止まる? 忘れ物?
っていうか、そんなこと言ってる暇もなく前の車も俺も急ブレーキでしょうが?
ふぅ〜、止まったぁ、と。
あれ? 俺は止まったけど・・・・・・ギョエェェェ!! う、うしろ〜!!
志村〜う〜し〜ろ〜! 状態?
俺のうしろを走っていたパジェロは猛烈なスピードで突っこんでくる。この状況じゃあ、俺ができることって祈ることだけでしょ? ルームミラーにだんだんと迫ってくるパジェロを見て、あ、ああ、ああ、あああ、ああああ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! みたいな。
でも間一髪、風を感じる数センチのところで避けることができた。
死ぬかと思った。