バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

オバタリアン、アム

 前からアムの習性で気がついていたことなのだが、どうも井戸端会議的なことが好きなようだ。前のアパートの前でも近所のネネと同い年くらいの子どものお母さんらと、天秤棒かついで売りに来るソムタム屋のばあちゃんらを交え、さらに近所の水商売だったり学生だったりの女の子も加えて話しているのをよく目にした。
 激しい人見知りのくせに、慣れると威力を発揮する典型的なイサーン人のアムは、当時6階の部屋の窓を閉め切っていてもよく聞こえるでかい声で喋っているのもだから、中心人物みたいな感じ。あまりにも声がでかくて、頭おかしくなってひとりで喋っているのかと思うこともしばしば。アムの声しか聞こえてこないからね。
 そんで、こっちに引っ越してきてから最初のうちこそおとなしかったが、半年もいていよいよ威力を発揮しはじめてきた。コンドミニアム内の公園で遊ぶ子どもたちにまで学校やら、果ては学費の件まで訊いている。
 習性のひとつとして、バンコク人的な洗練された感じの人とは決して仲よくしない。アムの井戸端仲間はみんなどの角度から見ても田舎から来ました的な感じ。うちの会社とかに来ても、インちゃんとかネーンちゃんとかとは絶対に話さないのに、ビザ関係をやってくれている子はイサーンの子で、その子とはかなり喋る。
 最近仲が良いのはネネと歳がほとんど変わらない女の子のお母さん。この子もお父さんは日本人。
 まあ、井戸端なのでいろいろと噂を聞くわけね。特に最近の話題はその日本人のお父さんだ。かなり変わっている人なのか、俺も挨拶もしない。だって初めて見かけたとき、ああこの人か、と挨拶しようとしたけど無視してプールで泳ぎはじめてさ。そのあとネネが上がってきて、その人の子どももネネと遊ぼうと一緒に上がってきたんだけど、アムに体拭いてって。それはいいんだけど、それに対して、ありがとうとかないしね。見て、そのまま無視して泳いでるの。なんだコイツと。そもそも3歳前後の子どもをひとりで水回りにいさせるなんて言語道断。
 溺死って何cmでできるか知ってる?
 子どもなら1cmあればいいんじゃないかな。要は鼻の高さ分ね。
 なので子どもをひとりでプールに行かせるのは超危険。
 で、最近アムが仕入れてきた噂話もすごい。まずお菓子も肉も食べさせないんだと。先日その一家でムーガタに行ったらしいんだが、子どもにはなにも食べさせず、ひとりで黙々と食べるんだと。その女の子にはまだ歩けないくらい小さい弟がいるんだが、お母さんだって抱っこして食べるわけにもいかないしさ、肉とか野菜をブースに取りに行くときも赤ちゃんを抱っこもしないんだって。それを俺がやったらアムに蹴り飛ばされるわ。朝も6時に絶対起床。昼間は寝てはいけないとか。アムとは正反対の厳しさ。7時に家を出るときに起きてたことなんて1回しかないよ。昼間だってテレビと昼寝三昧だろうし。
 俺でよかったな。
 と言ってみたら、アムは、う〜ん、だと。
 何!
 というか、俺の噂もしているんだろうな。向こうの家族に笑われているかもしれない。
 とりあえずアムに言っているのは、相手が自分の旦那をいくら悪く言おうと、アムもその人のことを悪く言ってはいけないよ、と。