バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

3:42 壮絶な交通事故

 現場に到着。
 まず、40代のおっさんが車にバイクでぶつけられたと。しかし、足の甲に2、3の傷があるだけで、立って歩ける。念のため触診で骨折はないか確認するが、問題なし。
 さて、何が起きたのかと。けが人はこのおっさんひとり。でも、本部の車が3台とうちのチームの車全部、さらに別エリアの車から別のレスキューグループの連中まで、野次馬10人程度に対して、レスキュー関係者が100人近く。
 特に人だかりのところへ行ってみると、ホンダのCRVが歩道を乗り越え茂みに突っ込んで大破している。
 運転席側から中を覗くと、中はもうぐちゃぐちゃ。エアバッグも開いているし。運転手はどうしたのでしょうか?
 で、車の後ろを撮ったり、人だかりを撮ったり。
 助手席側にうちのチームの奴が中を覗いている。何してるんだろ? と思い近づく。
「お、タケシ! こっちの一番前に来て写真を撮っていいぞ!」
 え〜! 壊れた車撮ってもな〜。ま、せっかく誘ってくれてるし、じゃ、と思ってびっくり仰天。
 首の折れた若者が死んでた
 それでこんなにいたわけね。
 手当てをしたおっさんがどう関係しているのかよくわからないけれど、どうやらこの若者は何らかの理由で猛スピードで右側前輪辺りから歩道に乗り上げ、跳ね上がって左横転しながら、車が90度になった状態で運転席真上が木に激突。運転手の若者はシートベルトをしていなかったので、たぶん助手席側に倒れて逃げたと思われ。しかし、それが間違いで、顔ごと地面に激突した上に木に潰され、首があらぬ方向に折れた、と。事故車の状態から見るに、運転手はシートベルトをしているかそのまま運転席にとどまっていれば、顔面骨折や両脚骨折などの重傷で済んだ可能性が高い。
 車は大破しているため、本部の救出機器を積んだレスキュー車を待って、破壊開始。
 ドアが壊された段階で現場にいた多くの連中が気づいたことだが、死体の胸だと思っていたのは実は背中だった。つまり、仰向けで首が左方向に折れたのかと思っていたら、うつ伏せに挟まれていて右後ろへ向かって折れていた。
 死体を取り出し、道路へ。
 ここで、監察医待ち。
 手袋をして死体を触ったため手が血だらけ。なので事前にハマさんにカメラを渡していたんだけど、新しく入ったボランティアの女の子が、俺のカメラの履歴を見たらしく「子どもかわいいね」って。俺もへへへって。でもそんなほほえましい会話のふたりの目の前には、あごも砕け頬が破れた傷だらけの死体。なんてシュールな光景?
 さて、監察医がやってきてわしわし死体を検分して終了。ボランティアで死体を布に包んで、本部の車へ。
 そして終了。
 本部の隊員が死亡者の携帯履歴から何個かにかけて、母親と連絡がついたらしい。死体搬送先の警察病院へすぐに来るだろう。しかし、母親の気持ちを考えると、なんか、な。死亡者は25歳。タイではCRVは高いからね。25歳でとても買えるとは思えない。家の車だったら・・・・・・。両親が買い与えていたら・・・・・・。そう考えると、辛い、よね。
 人生、何が起きるかわからない。