バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

あの人は今

ヤーアイスはこのように吸うようです。

 タイ語学校に通っていたころに知り合ったゴーゴーの女、Pに久々に会った。皿井タレーさんの「バンコクジャパニーズ列伝」の中にも登場するP。あと数ヶ月の命だと泣いていた彼女は約9年が過ぎた今も健康です。いや、それどころか・・・・・・。
 あのころ、カオサンのとあるゲストハウスにいろいろな事情により滞在せねばならなくなり、そのときに隣のベッドにいたK君がタイで就職するということで昨夜1年ぶりに会った。彼はなんとあのPが俺と二股をかけていた相手で、まあお互い終わったあとに偶然にもカオサンで隣り合わせたわけで。俺はタイ語を当時から話せたし*1読めたのでうその範囲が狭かったのだが、PのK君へのうそは、当時27歳だったのに17歳と言っていたり、そりゃ笑える内容だったよ。で、K君の提案で、ふたりで手をつなぎながら彼女の勤めるゴーゴーへ行った。走って店を飛びだしていった。K君とは今でもいい友だちだ。
 昨日は軽く飲んでて、Pの話になった。彼女はその後ゴーゴーを辞めて、自分でスクムビット方面にてプールバーを開いた。話には聞いていたけど、どこか知らなくて行ったことがなかった。そんな中、K君が情報を仕入れてきてふたりして訪ねたことがある。そのあとK君が帰国しひとりで行ってみたのが最後。もう4年5年くらい前の話。あれ以来会っていないし、K君ももう数年行っていないということなので、早速向かったわけで。
 タイ語学校修了当時数ヶ月の帰国中に豊胸手術をして変身したこともあるので、5年も会っていなかったのだから背が高くなってたりして*2、なんて笑いながら行くも、ふたりして同窓会の会場に向かうような緊張感を持ちつつ店のある通りに来る。というか、店の場所、憶えてねぇ。この辺かなという辺りをうろつく。果たして彼女はいるのか? 本当にまだ同じ場所で店を構えているのか? ちょい冷静になってみれば、なにを話せばいいんだ? どんな顔して会えばいいんだ?
 そのとき。
「テーン、こっちだ、こっち。どこ行くんだ。こっち来い」
 Pの声・・・・・・。5年? ぶりなのにまるで昨日会ったような口ぶり。さらにすっぴんのどえらい顔。こんな再会を誰が予想していただろう。ホント俺は言葉がなかったよ。
 そのままとりあえず店の中へ。
 金曜の夜10時。客ゼロ。大丈夫か? ソファーはぼろぼろだわ、女の子が勝手に隣に座っているわ。なんなんだ、この絶大なる微妙感
 トイレに行ったらカウンターの中からPが訊く。
「今回は何日タイにいる?」
 もう7年になるんですが?
「なんで今まで全然来なかった?」
「ああ、Pのこと、すっかり忘れてた」
「豚みたいにぶくぶくしやがって」
 ひ、ひどい・・・・・・。でも、この感じ、好きかも
 やがてPは化粧をしてあのころと全然変わらない顔で我々のテーブルに来て、ご飯とナムプリックを食べはじめた。大丈夫か、この店。
 早いとこ出ようなんて言っていたが、なかば無理矢理な感じで100パイパーを開けさせられ*3、どうせふたりじゃ飲みきれないし、キープするつもりもないから女の子たちにも飲ませてたらだんだん和んできて、楽しくなっちゃった。
 よく見れば女の子もそこそこかわいくていい。たった6人の少数精鋭か。K君が気に入った一番かわいい子は、場末感大放出のこんな店にしては珍しく、英語が上手だった。
 Pと今の勤め先の話になり、どうやって通っているのか、と。車さ。
「今、私は車を2台持っている」
 そんなに儲かっているの?
「毎日席は全部埋まるし、週末なんか店に入りきらない」
「マジ? その証拠を見せてよ。こんながらがらじゃ信じられん」
 バッチ〜ン!
 ビンタ食らったよ。8年ぶりのPのビンタ。思い出したわ。コイツ、こういう奴だったんだ。
 店ガラガラで誰が儲かってるなんて思うよ。そういえば、プールバーなのにビリヤード台ないし。K君が訊いたところでは客が多いので人にやったということだが、資金のやりくりに売ったとしか思えない。
 それから女の子たちの年齢の話になり、Pに振ったら怒られた。もうそろそろ40になると思うけど。
 K君のお気に入りプロイちゃんは20歳。色白で韓国人っぽい感じ。スタイルもよくピッチピチ。嫌がられながらも、K君におっさんだと言われながらも触る。隣にいるPの脚とピチピチ度を比較しようとしたら、また殴られた
 ふと思い出した。豊胸手術の資金などはどうやら麻薬関係の売買にて得たという噂を当時ある人から聞いた。俺は全くクスリ関係に興味がないのでやったことはないし、当時すでに30くらいだったPはまあ年齢的には大人だったので決して俺に勧めることもなかった。そういえばPは錠剤系のをやってたな、当時。で、どうやらそれは本当だった。
「最近はどうなの?」
 売ってはいないが、毎月10万バーツレベルで仕入れているらしい。完全にはまっているな。
「いや、私ははまっていない。好きなだけだ」
 それは・・・・・・。
 ヤーイー、ヤーバー、ヤーアイス。いろいろとあるようだが、飛び方は違うのかね?
 P曰く、違うらしい。今はヤーアイスがいいんだと。
「やってみる? あるよ」
「結構です」
「私を誰だと思ってる? 10万で仕入れて友だちや店の女の子にあげたりしてるんだ。金を取ると思っているのか?」
 そういう意味で断ってるんじゃねぇよ。
 その後普通に飲んでたんだが、ちょくちょくカウンターの奥に消えるP。そんで、呼ばれた。
 ヤーアイス、吸引の実演。自分で作った吸引器はペットボトルにいろいろと付けている。いつも思うんだけど、クスリとか葉っぱが好きな人のその工作にかける情熱って、感心するというか呆れるというか。粉の方も見せてもらったけど、塩みたいな結晶が2、3粒で4000バーツだって。高っ! 警察やら売人は顔見知りなのでよほどのことがない限り大丈夫なのだそうだ。途中自称19歳*4が来て気前よく吸わせてた。なるほどね。こうして店に女の子をとどまらせているのね。
 それからもちょくちょくカウンターに消える。Pよ、おまえはジャンキーだ。
 しかし、Pは全然変わっていなかった。当時すでに今の俺くらいの歳だったからもう人間ができあがってて、それで変わらないんだろうね。タイ語でけんかできるレベルになったのも、振り回された教訓を活かしタイの女の子に騙されることもなくいられたことも、実はPのおかげではある。ひどい女だけどね。夜の仕事の裏側やタイのド田舎*5、葬式、タイの下の方のクラスの人の生活とか、ネタの尽きない世界を見せてもらったよ。
 結局100パイパーは全部開けてしまい、これを書いている今、二日酔いだ。もう酒はやめる! なんて思うけど、あの場末感は慣れると居心地がいい。また行こうかな、数年後に。

*1:というか、俺が誰にでも通じる発音と口げんかできるレベルにまで引き上げてくれたのがほかならぬPなのだが

*2:Pは145cmもないんじゃないかな

*3:スーパーなどで400バーツのウィスキー。この店では1200バーツ!

*4:Pが言うには17歳。俺も17歳だと思う。彼女が隣にいて、気になって年齢の話になった。こいつがいなければ年齢の話でPに怒られなかった

*5:アムの田舎はまだかわいい方