タイが元々合ってたというか、タイに来る運命だったのか
タイが最初から苦にならなかったのは、元々タイが合っていたからなのだと思う。インドに行ったとき、カンボジアに行ったとき、ラオスに行ったとき、中国、ベトナム、シンガポール、マレーシア、どこでもそう感じたことはなかったと思う。
まず、思うところはパクチーだ。19歳くらいのとき、中華料理店で中華粥を頼んだときにシャンサイがついてきた。当時はなんのことやら。あのころは日本にパクチーなんて言葉はなくて、シャンサイかコリアンダーと呼ばれていたみたい。それもあとで知った話だけれど、オレはそんなことなにも知らないわけ。
そのときに、粥を持ってきた中国人の店員が小皿に盛ったパクチーを置いて、
「お好みですが、これ、シャンサイですから注意してください」
と言った。注意? 辛いのかなんなのか。
それでその小皿を持ち上げて臭いを嗅いだけども臭いとは思わなかったし、実際に粥に入れて食べてみたけども、香りはむしろ好きだった。だから、店員の言葉が意味わからなすぎて、逆に怖かった。
辛いのもそうだ。オレは子どものころから、熱いものは徹底的に熱く、辛いものは徹底的に辛くというのが好きだった。ピザとかも表面が真っ赤になるほどタバスコをかけた。それくらいだったので、辛いものはまったくもって平気だったから、タイ料理にとにかく躓くことがなかった。
食べもの以外でも、人を待つことにイライラしないし、逆に待たせることも平気なんだけれども、タイ人の気質が気にならないことが多い。もちろん、イラッとすることもたくさんあるけれどね。タクシーの乗車拒否とかさ、やめちまえよとは思う。ほかにも細かいことはたくさんあるけど。
そういった、いろいろなことがタイに向いていたのだなと。自分から自分が解放されたのがここだったなと思う。日本はオレには向いていなかったのかもしれない。よく「もうタイに永住コースですか」なんて質問される。家族がタイ人と考えると今の時点ではその可能性が高い。でも、確実だとも思っていない。離婚するかもしれないし。
ただ、少なくとも、タイに永住コースかどうかはわからないけれど、日本には戻らないということだ。飯はおいしいので、日本は年1くらいでちょうどいい。
そういえば、パクチーで思い出した。
先のように、20年ほど前はパクチーなんて誰も知らなかったくらいなのに、今はむしろシャンサイとかコリアンダーが通じないみたいね。
なによりも驚いたのは、パクチーサラダだ。タイだと、日本人が思いもつかない「日本風」料理がよくあるが、これはまさにタイ人が思いつかない「タイ風」料理だ。だって、日本でパセリサラダなんてあっても誰も注文しないでしょうに。それにかなり似ている。
20年近く日本を離れると、最早外国だね。かといってタイが母国でもない。で、車で台湾の歌聴いて、って、ときどき自分がなんなのかわからなくなる瞬間がある。