バンコクとタイ家族のこととくだらない話と

タイ在住歴20年のライター・高田胤臣の個人的なブログ

豚の南部カレー

 まず、カレーというのはタイ料理にはない。ゲーンとかスープを便宜的にカレーとしているだけだ。中にはタイ語名でも「ガリー」というのはある。これも直訳ではカレーになるにはなるが、料理自体はカレーというよりはやっぱりゲーンに近いのかな。

 さて、オレの朝食は大体ガパオライスの炒めバージョン、ガパオ・クルックカーウなのだが、ときどき違うものが挟まってくることもある。それが豚肉のカレーになる。南部料理で、タイ語名は「ゲーン・グラドゥック・ムー」という。

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ゲーン・グラドゥック・ムー。

 まあ、骨付きの豚のゲーンなのだが、必ずしも骨付きではなく、豚肉をぶった切ったものを入れている感じだ。これにコブミカンやいろいろな香草、南部料理らしくスパイスが効いている。

 とりあえず、タイ料理というのはホント食べられないものがたくさん入っているよな。口に入れてはいけないものではなくて、噛めないものというか。トムヤムスープなんかその典型だ。トムヤムクンなんか食べられるのってエビとフクロダケとムラサキタマネギくらいじゃないか? パクチーが入っていればパクチーもだけど、結局それだけ。邪魔なものがとにかく多くて、ガアアっと食べられない。

 だからというわけではないが、和食の定食っていいね。米を掻き込んで食べるあの感覚というか。

 ゲーン・グラドゥック・ムーに話を戻すと、とにかく辛い。地獄の辛さである。ほかの店がこの辛さなのかどうかは知らないが、近所の市場にある南部ゲーンの店はホント辛い。トウガラシの辛さもあるし、スパイスの辛さもあって、そこらのタイ料理とは全然違うのだ。これは結構きつい。

 でも、これを一緒に食べると、米を何杯でも食べられる気がしてくる。辛さはまったく緩和できないのだけれども、ほんのちょっとのゲーンで大量の米がいける。麻婆豆腐の原型も脂っこく異様なまでに辛いのは少量で大量の米を食べるためだったとか? このゲーン・グラドゥック・ムーはまさにそれだ。

 南部料理だと日本ではマッサマンカレーが人気になっているようだけど、あれはココナッツミルクたっぷりといった感じで甘い。それに大量に食べるには結構重い。その点でもゲーン・グラドゥック・ムーそのものはライトなので、量をこなすことができる。

 ほかにゲーン・グラドゥック・ムーに匹敵するものがあるか考えてみるが、タイ料理の中にはないような気がする。辛くはないけれども「ガイ・パット・メマッムアン(鶏肉とカシューナッツの炒めもの)」が近いかなと思ったけれど、インパクトがないかな。

 というわけで、ゲーン・グラドゥック・ムーはオレの中で結構好きなタイ料理になりつつある。