ネーム
タイの飲み屋みたいなところに行くと、最近は必ずあるのが「ネーム・シークロンムー・トート」だ。ネームとは発酵肉の料理で、シークロンはスペアリブ、ムーがブタ、トートが揚げるなので、発酵した豚肉のスペアリブの唐揚げである。これがビールに合う。
主にトウガラシ、ショウガやライムをさいの目に切ったもの、ピーナッツ、パクチーがついてくるので、まとめて口に放り込む。トウガラシの辛さは舌で感じる痛覚なのだそうで、舌に触れさせなければ風味を楽しむことができる。
ネームは最近こそ量産化しているんだろうな。だからどこにでもある。15年くらい前は定番というわけではなくて、なかなか見かけなかった。というのは、今もそうなんだけども、ネームのレシピとか作り方を検索すると、最終的に発酵が成功するか否かは運次第みたいなことを書いている。だから、作り方が下手な人は成功しないこともあるわけで。だから、定番料理としては面倒だったのだろう。
オレのこのネーム・シークロンの思い出はボーリングだ。セントラル・ワールドがまだワールドトレードセンターだったころ、伊勢丹あるいは紀伊国屋の上はメジャーシネプレックスだったかな。映画館だった。その映画館にボーリング場が併設されていて、そこにネーム・シークロンがあった。
オレはボーリングはしないけど、当時は娯楽が映画かボーリングくらいしかなくて。今はランナムに免税のキングパワーのでかいのがあるけど、ワートレ時代は建物の中央辺りの最上階にキングパワーがあった。その近辺にアイススケート場もあった。でも、アイススケートはあまり人気がなく、学生とかタニヤやゴーゴーの女の子と昼間どこかで遊ぼうとなると映画かボーリングしかなかった。そのときにみんながやっている横でビールとネーム・シークロンを楽しんでたって思い出だ。
でも、ネームっていうのは本来はソーセージみたいなやつなんだよね。これも発酵したもので、ネーム・シークロンの方があとから来た感じというか。コンビニでも売っているし。
ソーセージタイプのネームは、オレは新宿のタイカラオケのマラコーで初めて食べた。激辛で、でも生肉なのかなんなのかよくわからないけど、ムチャクチャおいしい、みたいな。
あと、サコンナコン県とかウドンタニー辺りに行くと、ネームというと葉っぱとかにソーセージだとかを包んで食べる、ベトナム発祥の料理になる。ベトナムにもネームって料理があるし、それもやっぱりソーセージっぽいんだけど、もしかして発酵肉自体がベトナムから来たとか? 知らんけど。
だから、ネームと言っても発酵肉なので、形はいろいろある。ウドンタニーのレストランにネーム・シークロンがあったから注文したら、米まで発酵させているのかな、あるいは米を詰め込んだサイクローク(タイ式ソーセージの一種)とスペアリブを発酵させているのか、こんな形のものが出てきた。米はカリッカリに揚がっていて、発酵が強めなのか、結構すっぱかった。最初は思ってたのと違うと思ったけど、思い返すとまた食べたいって思う。