ヌア・コークン
今でこそバンコクに和食店が溢れかえっていて、なんでもバンコクで食べることができる。寿司もそうだし、焼肉もそうだ。焼肉店なんかはかつてはあまりなく、日系企業の駐在員なんかはスクムビット12のコリアンタウンの韓国焼肉で肉を噛みしめていたものだ。ホント、バンコクは変わったよ。
このバンコクの焼肉店の増加に一役買ったと言われているのがタイフレンチ牛だ。東北のサコンナコン県の畜産組合が認証している牛肉で、プロンポンのヴィラマーケットの裏に直営店がある。日系の焼肉店の多くもここで肉を仕入れている。
一般に小売りもしているので、駐在員の奥様方がたくさん買いに来る。実際、店で食べるのと比較して数分の1くらいの値段で買える。カットも量も自在に注文できるので、焼肉を自宅でする場合には結構楽だったりもするし。
もちろん品質は店で食べるのと同じだ。ただ、タイなので、徹底した管理までは行っていない。だから、たまに筋が多かったり硬いときもあるんだけれども。それはもうタイだから仕方がない。
とにかく、このタイフレンチは日本の焼肉と比較しても遜色ないくらいおいしい。タイ人はこれまで牛肉はあまり食べてこなかった。家畜としての道具であるし、そもそも食肉牛ではないので食べることがなかった。それがこんなにいい肉が出てくるなんて。変わるときは変わるものだ。
ちなみに、このタイフレンチは英語名で、日本人も同じように呼ぶ。しかし、タイ人はこの呼び方では通じない。タイではヌア・コークンと呼ぶ。
今はたぶんもうないのだが、ラチャダーのソイ4にあったパブ街のど真ん中にでかでかとコークンと掲げていた焼肉食べ放題店があった。ベトナムとかカンボジア式に、鉄板にバターを載せるような店だったが、まだベストビーフあまりも知られていないような時期に、そんな店があった。
いくらだったか憶えていないが、日系の焼肉店なんかよりもずっと安い。だから、同じ肉を食べられる穴場を発見したとボクは狂喜乱舞して足を運んだものだ。
ところが、である。
コークンがそもそもウソなのか、コークンの切れ端をもらってきて店に出しているのか知らないが、どの肉も筋が多くて、肉質も硬い、最低の焼肉だった。これだったら、昔ながらのヌアヤーンと変わらない。いや、それよりも酷かった。
肉質がガチガチに硬い上に、画像のように結構肉厚だった。噛み切れない。そのまま飲んだらつっかえて死ねるレベルだし。しかもこのときはガトゥーイの店員にムチャクチャ気に入られて、ずっと周りをウロウロされてたし。最悪だったな。